1.ブータン前夜
4月16日(火)に成田を発ち、同日バンコク経由でデリー入りした。
今回は約1年間にわたって、ブータン東部にあるルンチ県、モンガル県での農業案件に従事する。
ブータンはインドと中国に挟まれた神秘の小王国である。面積は九州を一回り大きくした程度だが、人口は70万人に満たない。男性は「ゴー」、女性は「キラ」という「丹前」のような民族衣装を着用し、見た目は全くと言っていいほど日本人に似ている。 日本で背広姿のブータン人は、「外国人」に見られず、「しばしば日本語で道を訊かれて困る・・」、と嘆くほど日本人的である。その人と形は追々写真で紹介することとしよう。
私の会社とブータンとの関わりは強く、10年以上も前からこの国で農業、道路、橋梁関連のプロジェクトに参画し、現在も5橋の国道橋建設の施工監理を行っている。今回の農業開発調査で、珍しくブータンで2件の業務を実施することとなった。私自身は過去に2度ほどブータンを訪れたことがあるものの、これから3度の渡航、延べ220日間を過ごすのは初めての長期滞在経験となる。
ブータン国は現在も鎖国に近い状態を保っており、観光であれ、仕事であれ、そう簡単に入国することはできない。空路はDruk航空というブータンの航空会社1社の運行(バンコク、デリー、カトマンズ、カルカッタ、ダッカのいずれかからアクセス可)のみで、ビザを取得しなければ航空券は発券されない。観光で訪問するには、1日200ドル以上のパッケージ旅行しか手だてがない。10日間の日程で訪ねるには、即ち2,000ドル也の滞在費がかかる、しかも往復の航空運賃抜きで・・・。
そんなブータンに仕事で行けるのは、実は、「ラッキ〜!」なのだ。 しかし、10日間ならいざ知らず、トイレも水も電気もなく、徒歩か、せいぜい馬で現場を回る仕事は、それなりにキツイはずでもある。
ところで、ブータンには日本大使館が無い。在インド日本大使館がブータンを管轄しており、業務の節目にはインドを訪れることとなる。日本からはバンコクからDruk航空でブータンに空路入るのが最も近道で、今回の先発調査団員も昨日バンコクから直接ブータン入りしている。
明朝4時にデリーを出発し、午前7時にブータン国西部のパロ空港に到着の予定。そこから車で東に1時間半ほどのティンプーに移動する。ブータンと日本との時差は3時間。ブータンの午前7時は日本の午前10時である。
さぁて、とにかくも、明日から「楽しいブータン暮らし」が始まる。ヒマラヤの南側を一気に東進し、朝陽に染まるエベレストほかを満喫しながら谷沿いにパロに降りる。70人乗りながら4発のジェットエンジンを持つイギリス製ジェット機は既にデリー空港に待機している。 まずは無事パロに着陸することだけを願って、このあと夕食を済ませ仮眠をとる予定。 もっとも、興奮のあまり、ぐっすり眠られるとは思っていないのだが・・・。 2002年4月17日 |