ただいま出張中 


10.生き物天国ブータン

ブータンは敬虔な仏教徒の国である。どれくらい敬虔かといえば、彼ら基本的に殺生はしません。蚊も殺さない。市場には肉が極めて少ない、なぜなら殺さないから・・。雄牛でも去勢はしない。老廃牛でも死ぬまで飼いつづけ、決して処分しない。鶏肉もほとんど流通していない。卵を産まない雄鳥も、卵を産まなくなった雌鳥も殺さない。死ぬまで飼う。家畜だけじゃない、野良犬も殺さない。だから町中に野良犬があふれている。しかも、始末の悪いことに、彼らは温かいアスファルトの上を好んで昼寝をする。「殺生をしない」、つまり殺されないとわかってるから、車が来てもどけようとしない。これは犬だけでなく、牛も、馬も同じ・・。ティンプーで従事中のシニア・ボランティアの専門家は、毎日野良犬に不妊治療をしているという。これもまた大変なことだ。

ワークショップで、農業生産が上がらない理由を尋ねると、「病虫害が多い」、とか「野生動物が食い荒らす」、とか必ず意見が出される。しかし、「殺虫剤の使用」や「野生動物の駆除」というアプローチは出てこない。害虫だって、害獣だって殺してはいけないのだ・・。結局、「フェンスを作る」、とか、「小屋を作って見張る」、とか妙に金とヒマのかかるアプローチばかり・・。

一方、ブータン人は肉が好き。殺すことはしないけど、死んだら食べる。「おまえが鶏絞めたら、俺たちが捌いて肉にするから、一緒に食べよう」、こんな調子である。ちょっと脇を見ていたスキに豚が殺されたら、殺した者を責めるより肉の処理を考えるかもしれない。

また、ブータンは動物だけでなく、草花も非常に豊富だ。下の写真にもあるように、そこら中が野生の果物や山菜でいっぱいだ(食べられるものは少ないが・・・)。桃、なし、いちぢく、ヨモギ、ゼンマイ、ワラビ、キノコ(とくに松茸は時期になればいやというほど食べられる)、野いちご、さらには大麻なんてのもそこいら中に生えている。さらに、山には様々な種類のシャクナゲ、ブルーポピー(ケシ)などの高山植物があふれている。

ワラビなんかは今の時期、そこら中に生えていて、毎食のようにワラビが出てくる。「いいかげんにしてくれ!」、といいたくなるくらい・・。この国に「山菜採り」、「昆虫採集」、ほか動植物の好きな人が来れば、まさにここは天国かもしれない。いまも北海道でワラビ採りに精を出している母親を、そして既に他界したが、薬屋を経営し薬草の専門家でもあったその父親(祖父)を、セットでここに連れてきたら本当に喜ぶのだろうと思う・・・。

2002年5月20日

 

昨日こんなことを書いたから・・・、というわけではなかろうが、今朝はひどい目にあった。朝3時から、ネズミがベッドのすぐ脇で「がさごそがさごそ・・・」、はじめは居場所がわからずに、ゴミ箱を外に出したりしていたが、どうやら部屋のドアの戸枠に穴があって、そこになにやら紙くず等を引き入れて戯れていたらしい・・。そしてそのあと午前4時・・。今度は昼間いいだけ寝惚けていた犬が、まぁまぁ、吠えること吠えること・・・。30分も吠え止まない・・。「そろそろ疲れてヤメルだろう・・。ここで追い払うために起きたら目がさえて眠れなくなる・・」と、「寝ようと努力」したものの耐えきれずに、5時に外に出て犬を追い払った・・。 見れば、何かに対して吠えているのではない。ただ吠えている(ようにみえた)のである・・・。「くそっ、昼間起きて夜寝ろ!」、本当に腹が立った・・。

そして、今日、タンマチューの高校を訪れた際、キッチン棟の前のカマドで驚いた。なんと調理後のカマドの中、残り火のところで犬が気持ちよさそうに寝ているのである。確かに風邪の強い寒い日だった。でも、犬のすぐ脇ではまだ薪が燃えているのだ。くすぶった煙が犬を直撃し、さながら「犬の薫製」でもできそうな状況だったが、犬は微動だにせず、カマドの下で「ボーっ」としてた。「車じゃないんだから、だれも守ってくれないよ・・、そのままそこにいたら本当に天国に行っちゃうよ・・」、と声をかけても、犬はやっぱり動かないのである。ちなみに鍋の中身はカラだった。

2002年5月21日

   

 

 

戻る