12.ある若年公務員の職場
20日からルンチ県でのワークショップを行った。前半2日間は県職員対象、後半3日間は郡長と郡職員対象である。ルンチ県には8郡あって、それぞれ遠路はるばるワークショップの行われるルンチ県庁ゲストハウスまでやってくる。ある者は車で、ある者はバスで、そしてある者は徒歩で・・・。 今回最も遠くからやってきたのはルンチ県北部、中国と国境を接するクルテ郡ドゥンカル村から来た農業普及担当官のKinley Dorji氏(27歳)である。彼は37キロの道のり(しかも急な山岳道路)を歩いてやってきたのである。普通なら軽く2日かかる道のりだが、彼は朝6時に出て夕方6時半に着くという。聞けば、ここから約6時間半は登り一方、それから6時間が下り道だそうだ。彼が歩いて12時間半なのだから、我々ならその1.5倍、へたすると2倍はかかるだろう・・。 ところで、先週14日にはたしか普及員の会合がルンチであったはず・・。そこにインタビュー調査を依頼するためにうちの団員がやってきたのだから間違いない・・。 彼に聞いた。 「先週もここに来たんじゃなかったっけ?」 「はい、来ましたよ」 「じゃ、そのままいたんだ、ここに・・」 「いいえ、仕事があったので帰りました。2日間しかいませんでしたけど・・・」
彼の先週からの仕事は以下のようである。
13日(月)朝6時にドゥンカルを出発。途中用事を済ませて夜8時半にルンチ着。 14日(火)朝から会議 15日(水)同じく会議 16日(木)生活資材、事務商品購入。午後ルンチを出発。徒歩6時間半で途中の峠の村ツァムリンに一泊。 17日(金)6時間歩いてドゥンカル着。 18日(土)休日 19日(日)休日 20日(月)朝6時にドゥンカルを出て夜7時にルンチ着 21日(火)ルンチにて仕事 22日(水)ワークショップ 23日(木)ワークショップ 24日(金)ワークショップ 25日(土)1日でドゥンカルまで戻る・・・・。
はぁ・・、なんとも厳しい・・。
「今度いつ来るの?」、と訊いたら、 「はい、30日に給料をもらいに来ます」、だと。 「もう、何年ドゥンカルにいるの?、と訊いたら、 「はい、4年です」、だと・・・。
日本の若者だったら(自分が若かったころも含めて)、絶対にこんな仕事務まらんだろうな・・。彼は少なくとも1ヶ月に1回は片道12時間歩いてルンチを往復しているわけで、その他の打ち合わせで月1〜2回はルンチに出てくるとすれば、この4年間で100往復以上していることになる・・・。
いやはや本当に大変な仕事ですね。 小学生、高校生の通学も大変だと思ったとけど、さすがに大人はもっと大変でした。
今年の7月から始まるこの国の第9次5ヶ年計画では、「普及員は必ず月1回郡内を周ること・・」、とか書かれているらしい。 おいおい、誰だ、そんなこと書いたの・・? 歩く者のこと、ちゃんと考えたのかなぁ・・? 2002年5月24日 | |
この谷の奥の奥にドゥンカルがある・・。 |
Kinley Dorji氏。ちょっと見は風間トオルに似てなくもない? |
|