ただいま出張中 


3.地図と酒はパキスタンにおまかせ

たまたま寄った日本の建設会社の事務所でカラーの5万分の1の地形図を見つけ、「どこで手に入れたんですか?」 と訊ねたところ、「いや、PKFでもらいましたよ」との話。また、全葉入手したという水道関連コンサルチームにも確認したところ、「PKFの承認を得ればマップ・セルでもらえます」とのこと。

1日の用事をほぼ終えて、4時近くになった頃、「入手方法確認のため」、PKFのマップ・セルを訪れた。迷彩服の兵士ばかりのPKF。マップ・セルはパキスタン軍のPKF部隊が担当している。何気なく敷地内に入り、アテもなく歩くと、カフェテリアと売店を見つけた。「exit only」の扉から中を覗くと、あるはあるは、ビール、ワイン、コーラ、スナックなどなど・・。「おお、さすが軍隊、物資は豊富にある・・」。

「ここから入っちゃダメよ」、とチモール人のお姉ちゃんに制止されたが、「ねぇ、ビール売ってるの? いくら?」と訊くと、「あら、安いのよ、ここは・・。2ダースで24豪ドルよ」、という。確かに安い。缶ビール一缶70円。市価の半分である。

「えー、売ってよ〜」というと、「これがなきゃだめよ、ダメ」、とUNのIDカードを見せられた。「貸してよ〜、それ」、と甘えていうと、「いいわよ」と一度は言ったが、「だめ、ボスが来たら叱られる」、とドアを閉められてしまった。なんとも悔しい瞬間だった。

東チモールは物価がめちゃくちゃ高いが、酒(ウィスキー、ワインなど)だけは安い。道理で「酒に溺れる輩」が多いはずだ。それに、他になんの楽しみもないもんね。

さて、地図の件。マップ・セルに行くと、「本部のCMAに行くとこの申込書があるから、それに記入して、エンジニアリング・セルでサインをもらえばすぐにやるよ」、とのこと。「ま、申込書だけもらっておこうか・・」、とPKF本部に行き、申込書をもらうと、「ここで書け」とのこと。なんかよくわからないけど、5万分の1と25万分の1地形図が欲しい・・」と書くと、そこのオジサンが「何も見ずに」サインしてくれて、「エンジニアリング・セルに行ってね」と言われた。エンジニアリング・セルではパキスタン人のオッサンが電話していて、「ちょっと待とうかな」、と思っていたら、電話しながら「何も見ずに」サインしてくれた。

あれよあれよと言うまに書類が整い、再びマップ・セルに行き書類を提出すると、「ハイよ」とばかりに既にひと巻にされた38枚組の地形図を渡された。しかもすべてカラーコピー。しかもタダ。「日本でこの大きさのカラーコピーを38枚取ったら、4〜5万円は軽いな」、と思わず首をすくめた。(いいのだ。日本は十分金を出しているはず・・)

いやはや、いままでこの仕事をしてきて、こんなに簡単に、しかもタダで5万分の1地形図を手に入れたことはない。インドネシアだってカラーなんて手にはいることは滅多にない。しかも25000分の1地形図(全国100枚以上)だってあるんだからね・・。パキスタン人、自分の国の地形図なら絶対こんな風に出すことはないのに、「サッサッサッ、テキパキパキスタン」(なんのこっちゃ?)とやってくれますね、ありがとう。

帰りがけに、門番の兵隊に話しかけられた。「おまえらどこの国のもんだ?」 「日本ですけど、何か?」 「ようし、Yenだな。パキスタンの金と交換しよう。いい土産になるぞ・・」と真顔で言われてとまどった。鉄砲を持っているヤツに「金を交換・・」と言われても、「金を出せ・・」のように聞こえる。 「ないんですよ、今は・・。今度ですね、今度・・」と言って納得していただいて帰ってきた。(二度と行けんな、ビール買いたいけど・・)

なかなか熱心に「外貨獲得」に励むパキスタン兵、いいぞ、お国のためにも頑張れ。 パキスタン人(モスリム)だからこそ酒を扱っても目減りしないし、地図は「アチャ、アチャ」とすぐ出してくれるし・・。本当に「地図と酒はパキスタンにおまかせ」ですな。

 

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