5.危険は身近にある Iさんと歩いて夕食に出かけた。RnRという中華レストラン。ここはなかなかのおすすめである。 「タンバ、ビール」(ビール追加ね!)と言ったところ、「サンバ・ビーフ」という「牛肉の辛子炒め」が出てきたのには参ったが、ま、メニューも豊富でそこそこ楽しめるレストランだった。このレストランは小じんまりとした平屋ホテル(10室)に併設されているが、このホテルも30米ドルでバス・トイレ(温水シャワー)、TV、エアコン付き、洗濯は一週間5米ドルとリーズナブルである。いまのホテルに比べても値段は半分程度である。また安いだけにPKFのパキスタン人なども泊まっていて、一層「安心」でもある。もっとも部屋はまだ見ていないが・・・。 ま、そんなこんなで食事を済ませて、ホテルに向かった。ホテルまであと少し、最後の角を回ったところで、真っ暗な道の脇に固まっていたグループのお姉ちゃんに、「お客さん、ちょっと待って。ここで待ってた方がいいわよ」と声をかけられた。よく見ると、我々のホテルの従業員のお姉ちゃんだ。「どうしたの?」と訊くと、「ちょっと前に酔った暴漢2名が蛮刀をもってホテルに来て、騒いでいった」、とのこと。よく見るとホテル周りは黒山の人だかり・・。 その従業員達は、「今日はもう帰る」と言って帰ってしまったが、「帰るところのない」我々は仕方なくホテルに戻った。玄関のガラスは割られ、レストランのシャッターは閉められ、外をCIVPOL(文民警察)が警戒していた。 「入ってもいいですか?」と訊ねると、「ああ、もう大丈夫だ。部屋に鍵をかけておくように」と言われ、中に入った。 中庭では、客が不安そうにテーブルを囲んで話をしていた。 昨日、2週間に1度の邦人連絡会議で「安全管理情報交換」を行ったばかりである。やはり、失業者80%とも言われる現地人の中には、こうして外国人ばかりが「金にものを言わせて」うまいものを食べ、いい暮らしをしていることを面白くないと思っている輩がいるのだろう。ディリ市内では、毎日のように車のガラスが割られ、カーステレオが盗まれているそうだ。 UNDPで農業プロジェクトを担当しているM嬢(日本人)は、現場でPKF部隊(フィリピン)の宿舎に泊めてもらったそうだ。その際、部隊長が「私の部屋を使いなさい」と、営舎をあけ渡してくれたそうだが、彼は「いざというときはこれを使いなさい」と、ピストルを置いていったそうである。一体そのピストルは「誰に向けて」のものなのか? 今朝、朝食の席で「なんで私、農業なんだろう・・(農業担当でなければ、そんな現場に行くこともないのに・・)」、と悲しそうに彼女はつぶやいた。 「農業が悪いんじゃない、もっときちんとした現場行きの計画を立てないとダメだよ。女性にできることとできないことがあるんだから・・」と私は話したが、国際機関の仕事ぶりはなかなか厳しいものだ。そうやって一流の開発プログラム・オフィサーになっていくのだろう。 そういうわけで、一見安全そうな東チモールは、まだ「危険地帯」である。「味方もまた敵」、身近なところに危険があるのだ。 |