4. アルベルトさん一家の日常生活
東チモール人の朝は早い。お母さんはまだ暗いうちに起きているという。お風呂に水を溜め、お湯を沸かしてお茶を入れる。朝ごはんのパンは毎朝上の子供たちに買いに行かせるそう。お母さんがマンディーしてきたところを見たことがないので、もしかしたら朝早く入っているのかもしれない。そして庭の掃き掃除。木の枝や大きな葉の茎をまとめた簡単なほうきで毎朝落ち葉を集めている。一見とてもワイルドな茂みの中に暮らしているようだが、実は自分たちの生活圏をとても丁寧に扱って暮らしている。洗濯も家族8人分、全部手洗いしなくてはならないので、朝早くから洗って干している。こうすれば、多少水が滴っていても、日が高く上った頃には余分な水滴は落ちているのだ。 家族が起き出すのが7時前後。仕事や学校があってもなくても、みんな結構早起きだ。そして朝はとても賑やか。豚や鶏や犬の声がいたるところでするし、子供たちの元気な声や、庭を掃く歯切れの良い音が「ジャッジャッ」と聞こえる。お父さんは8時前には家を出てJICA事務所へ。下の3人の子供は公立の小学校に通うが、午前と午後の2部制になっている。一番下の子は7時半から11時半まで。下から2番目と3番目は12時から午後4時まで。学校によっては午前中だけの1部制のところもあるそうだ。上3人の子供たちはカトリックの私立高校に通っているが、これまた2部制とのこと。私がこのうちに来て以来、ずっと独立休暇のため、まだ学校に行く姿を見ていない。月謝は一人10ドルとのこと。この国の教育の現状については、また別の機会にまとめたいと思う。 お母さんは朝の仕事が終わってからも、お昼と夜の食事の支度と片付け、買い物、拭き掃除など忙しく働いている。はだしで家の中も外も駆け回っている子供たちのお陰で、1日中何度も床にモップをかけなくてはならない。しかし、日本のお母さんたちに比べて、子供にべったりの時間がほとんど無いように見え、その点では楽そうだ。子供は子供同士で目の届く範囲で思う存分遊んでいるし、赤ちゃんの場合も、面倒を見てくれる家族がまわりに多くいるため、母親がいつもついている必要は無い。 |
テレビに見入るアルベルト家の子供達
|
そして、東チモール人はよく昼寝をする。学校が休みということもあってか、10代、20代の若者たちもよく寝ている。昼寝と言っても、午前中からゴロゴロしていたりする。国連がこの国に入ってきて暫定統治を敷いた時、東チモール人の勤務態度が悪い、というより、朝から夕方まで働くという勤務形態に東チモール人が慣れていない、ということが問題になっていたのも頷ける。若者向けのエンターテイメントが無いこともあるし、気候のせいか本質的に疲れやすい体質のようにも見える。 |
たこあげに興じる子供達
|
東チモール人の日常を語る上で、停電や断水の話も欠かせない。私がこのうちに来て以来、停電はほぼ毎日だった。1日2時間から3時間程度、週に4日ほど計画停電をしているとは聞いていたが、この1週間はそれ以上だった。ときには午後5時から10時まで、電気が必要な時間中ずっと電気がないこともあった。停電している間はろうそくを立て、外に出て腰かけ、明るい月明かりの中でおしゃべりをして過ごす。というか、それ以外にできることがないのだ。大抵は電気が戻るのを待って食事をし、テレビを見て寝るが、夜遅くまで電気が戻らない日は食事を終わらせるとさっさと寝るしかない。これも慣れてくると、日常の一部になってしまう。子供たちも暗闇を怖がるようなことはない。ただ、断水はさらに不便だ。日中、街を歩き回って汗みどろになって帰ってきたとき、水が出ないと分かったときのショックは大きい。とは言っても、他の地方都市に比べればディリ市内はまだいい方だ。インドネシア時代に比べて明らかに悪化しているのは、この電力・水道事情だろう。国連がいてすら(実は日本政府の無償資金協力もこれら分野に入っていたりする)こんな状況である。所得税、公共料金を払うという概念すらまだ浸透していないこの国で、今後自らインフラを維持管理していかなくてはならない。 夜は晩御飯を終えると、電気さえあれば大抵は家族や近所の人々が集まってテレビを見る。子供たちは10時ごろ、大人たちも11時ごろには寝る。 まだまだ99年の民兵による騒乱の壮絶なイメージが先に立ってしまう東チモールだが、多くの人々は平和に幸せに暮らしている。 5月23日アップロード |