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5. 独立イベントは誰のため?

5月初旬からディリ市内では独立に向けたイベントが目白押しである。19日の晩から20日未明にかけての独立式典がクライマックスとなるが、他に東チモールのこれまでの歴史をまとめたドキュメンタリー映画上映会、演劇フェスティバル、マラソン、陸上、サッカー、バレー、テニス、空手、テコンドー、ボクシング、などなどのスポーツフェスティバル、国内各地の特産物を展示した産業EXPO、東チモール人写真家や芸術家による写真展や絵画展、コンサート、ファッションショーなどなど…。

これらイベントの英文スケジュールをJICAから入手した私はウキウキした。これでこそ、今回全くフリーで東チモールにやってきた甲斐があるというもの。平日の昼間であろうがなんであろうが、何にも縛られず自由に見て回れるのだ。スケジュールの中で興味のあるものにマーカーを引いて、20日の独立までの日程を立てた。夜のイベントなどは一人で行くのもなんなので、家族の誰かを誘ってみようと思った。ところが、うちの家族には、私のようなウキウキ感は感じられない。街中の浮き足立ったお祭りムードはどこ吹く風といった様子で淡々と毎日を過ごしている。そもそもイベントスケジュールなど一般の東チモール人は持っていないようだ。大学生など一部の限られた人々しか情報へのアクセスがないのだろう。イベントの情報があっても足がないためか、腰が重い。

ここの子供たちのうち上の3人は、19日の晩の独立イベントで披露するパフォーマンスに出演するとかで、毎日練習に通っている。5時間もかかるパフォーマンスだそうで、毎日炎天下、本番の行われる会場まで行って練習をしている。帰ってくるのは日によっては真夜中だ。本人たちは、楽しいというが、これを指導しているのはオーストラリア人だという。なにかおかしくないだろうか??

一体これらイベントは、誰が誰のためにやっているのか??独立を前に、「何かイベントをしなくてはならない」と強迫観念にかられているのは外人ばかりなのではないか?結局のところ、外人が企画し、東チモール人にお仕着せているのではないだろうか?街中で夜間も続けられている突貫工事(こんなことは東チモールの歴史上、初めてのことではないだろうか?!)も独立までに間に合わせなくてはならないという国連側の焦りが丸見えだ。

初めはそんな思いばかりが頭をよぎった。しかし、いくつか実際に行ってみてみると、結構盛り上がっている。スポーツイベントも盛況なようだし、EXPOも東チモール人で賑わっていた。東チモールの歴史を写真で追った写真展なども見ごたえがあった。東チモール人画家たちの展示会もよかった。ドキュメンタリー映画も良かったらしい。東チモール人に情報が十分伝わっていないこと、スケジュールが常に変更されていて、無駄足を踏まされることがあまりに多いのが気になったが、それはそれとして、外人のお膳立てしたイベントであっても、東チモール人が楽しんでくれさえすれば、それでいいのかも…、という気もするのだった。

 5月23日アップロード

EXPOには国内13ディストリクト、民間企業、各国政府や援助機関、NGOなども出展した。写真は日本ブース。わざわざジャカルタからやってきたJETROの人々が折り紙を教えている。

空手はスポーツフェスティバルの一種目、ディストリクト対抗戦だったらしい

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