ただいま出張中 


11.Can not!?

プロジェクトの方向はいささか厳しいものとなってきた。

思っていたより水源水量が少ない・・。「思っていたより」というよりも、「今ある施設に対して、もともとそれに見合う水源水量がない」ということなのだ・・。

さもありなん・・。ポル・ポト時代のかんがいシステム建設は、「知識階級を普遍的労働者にするための一ツールに過ぎなかった」のである。「水があろうとなかろうと」そんなことは関係ないのだ。とにかく重労働につかせること、それが目的だったのだから・・・。現在あるシステムは、その結果できた広大な水路群だったのだ。

「そんなポル・ポト水路システムをいかに再利用するか」、がこの調査のポイントでもある。しかし、そんな無計画・無秩序に配置された水路を水で満たす妙案などないのだ・・。 雨季のわずか2〜3ヶ月に雨は降り、そして洪水となって流れ去ってしまう。しかも、雨季の間にも雨の降る期間、まったく降らない期間があって、農家は「計算できない水を当てにした営農」(天水農業)を余儀なくされている。種や肥料を買って作付けしても、雨が降らずに枯死してしまうことも多いのである。

こんな条件のもと、大規模中規模小規模、いかなる規模のかんがいにおいても共通に採られるコンセプトは、「いかに、手許に水を残すか、流出を抑え、水の恩恵を享受するか」という一点に絞られる。大規模にはダムである、貯水池である。中規模ではため池である。小規模には庭先の池である。とにかく、身近なところに「水をキープする」のである。

私たちはこれを「impounding」と呼ぶ。要は「貯める」ということである。そして、思いのほか水源に乏しい、こうしたポル・ポトシステムのことを説明するために、調査団員がカウンターパートに「impounding」について説明した。

「impounding・・・」、カウンターパートにもなじみのない言葉らしい、理解できない・・。で、われわれは、カウンターパートに言った。「辞書調べてみな、impounding」と・・・。

はたして、カウンターパートの一人が辞書を引いた。そして彼は辞書をめくった後、「Oh、it means "can not"(できない)」と言った。

「なに? impoundに『できない』なんて意味があったか?」、と、彼の調べた辞書を取りあげて見ると・・・・・・・、「impound」の上に・・・・・、「impotent」、があった。

技術移転は難しく・・・・、しかし、時に笑える。

 

2001年5月3日

 

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