ただいま出張中 


24.コミュニケーション

 

午後4時半頃、目の回りを真っ赤にしたカウンターパートが私の机までやってきて、「カウンターパートみんながJICAチームを招待するから、裏の圃場脇まできてくれ・・」と言う。

「なに? クンクン・・、あんた酒臭いねぇ・・」、と私。

「ま、とにかく来てよ、ほかの日本人も誘って・・」、とのことなので、隣の部屋の団長ほか日本人全員をお誘いして、展示圃場脇にセットされた「野外パーティ会場」に向かった。

 

展示圃場のある農業省普及センターの賄いの家族が作ってくれたカンボディア料理とビール。食材に使われているのは圃場で穫れた野菜・・。トリ料理がうまかったが、気がつくと、事務所回りをいつも走り回っていたニワトリ家族がどこにも見あたらない・・・・。

私が手を腰から後ろにあてて「パタパタパタ・・・」と鶏の仕草をし、次に皿に盛られたトリ料理を指すと、農業カウンターパートのソバナリ嬢は、「そのとおり・・」と、大きく頷いた・・・・。

 

カウンターパート達は、まもなく調査を終えて帰国する日本人のために、一人5,000リエル(約1.2ドル。日雇い作業者に払う賃金が1日1ドルである)を出し合って、このパーティを企画してくれたのである。ありがたいことだ・・。

 

わずか1時間ほどの間に酔った酔った。

それにしても、大部分のカンボディア人が英語を話せず、日本人調査団員はクメール語が全く理解できない状況で、我々は何をどう話してあれだけ笑っていたのだろう?

 

「スイカは野菜か果物か?」、とか、「立ち小便はirrigation(灌漑)かdrainage(排水)か?」、とか、「彼女は左手の薬指に指輪をしているが独身だ、なぜか?」、とか、「おれは日本に2人の娘がいるがここでは独身だ。一方、あいつは日本でも、ここでも独身だ・・」とか、そんな他愛のない話だったのだが、一体、みんなどうやってコミュニケートして、笑っていたのか・・・?

 

たとえば、調査団の秘書の子(まだ20才前?)が赤ん坊を抱いて歩いている。私が赤ん坊を指さし、そのあと彼女の顔を指さし、「んっ? んっ?」と何度かその動作を繰り返すと、「この子供・・」、「あんたの子・・?」、という意味になる。そうすると彼女は、「ノォ」とか言って首を振る・・。言葉はなくとも意思は通じ、会話は成立する。

 

物怖じせず、見よう見まねでとにかく気持ちを通じさせる。それが言葉の原点であり、外国語を学ぶとき、外国で仕事をするときのスタートラインでもある。

圃場脇にセットされたテーブルの回りで、飲むは、食うは・・。さすがに女性はこの場には入り込めないようですね。

私の隣は事務所の掃除やお茶碗洗いをしてくれている女性。その隣が展示圃場担当のカウンターパート、ソバナリさんです。ピンクの服の彼女が普及センターの管理人。今日の料理を作ってくれました。トウモロコシを茹でてくれたのも彼女。感謝感謝。

ちなみに後ろでビールを飲んでいるのは運転手達。おいおい、大丈夫か?運転の方は?

水資源気象省タケオ支所の所長(右)と、農業省の農業経済担当カウンターパート(左)。所長が左手に持っているのがカンボディア産「Angkorビール」、右手に持っているのが、どこ製かわからないが「強励」と漢字の書かれた黒ビール。これが結構強い。それにしても、いい顔してる? 酔うとどこでも楽しいもの・・・。アフガンの人たちは酒は飲まないだろうが、こうした笑いは必ず見られるはず・・。考えてみれば、日本でも、身近にこんな笑顔を見せることなど想像もできないような隣人が数多いことに気づく。

2001年11月27日

 

 

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