ただいま出張中 


25.礼儀正しいカンボディアの子供達

 

今日は公聴会に出席した。

「参加型計画手法」を用いて、受益者の意向を十分に取り入れて計画を策定し、その結果、受益者の積極的な参加と持続可能な開発を実現する、そういった目的で開かれる公聴会。我々が立てた計画原案を地域住民に説明し、彼らの意見を聞いて計画を修正あるいは確認するのである。

 

以前、「公聴会」におけるインドネシアでの苦い経験を、本ホームページの「祝舟の雑感『8. 時間』(http://www.ma4.justnet.ne.jp/~nsam/zakkan.html)」で紹介した。公聴会で私自らが村民の前でプロジェクトを説明したことの結果について書いたものである。そのとき得た教訓は、「外国人(ドナー)が直接受益者に接することの良し悪し」であったが、今回は、現地のコンサルタントに公聴会の実施を委託しており、私たちはあまり表に出ない。私たちは事前に「facilitator」と呼ばれるカンボディア人の「進行役」にみっちりと計画の内容をレクチュアし、その進行役が受益者に説明する。私たちは、「オブザーバー」として各会場に一人ずつ、「ひっそりと」公聴会に出席している。当然のことながら、クメール語で行われる議論の内容は私にはわからず、カウンターパートが、進行役の説明が間違っていないか、住民からの質問事項などを私に通訳し、私は説明の内容を適宜指示する。

 

公聴会では、せっかく来てくれた出席者に対し、飲み物や昼食、スナックなどを出す。しかし、以前にも書いたが、ほとんどの出席者が「食べずに持ち帰る」。

また、15人しか呼んでいないのに、30人くらいやって来る。

「今日は、女性が5人も出席してましたよ」、と他の会場に出席した団員が言うと、

公聴会担当団員が、

「いや、女性は一人しか呼んでませんよ・・・」、という・・。

ま、食事とおやつ目当てもあるかもね・・・。

 

公聴会会場のコミューン事務所。コミューンの下に10〜20の村がある。ま、「掘っ建て小屋」である。

 

そして、公聴会終了近くになると、会場の回りには、子供達が集まっている。

進行役に、

「あまったお菓子と弁当もらっていい?」、と訊くと、

「どうぞ、どうぞ・・」と言うので、ビスケットの一杯入った段ボールを外に引きずり出して、子供達を呼び、「はい、どうぞ」、と一人一人に袋詰めのビスケットを手渡した。

ところが、みんな、両手はすでに、ミネラル・ウォーター、ジュース類の「空き缶、空きボトル」でふさがっている。なにに使うのか、おもちゃにするのか、残ったジュースをすするのか・・・。

 

でもね、その両手に持った空き缶やボトルを持ったまま、手を合わせ、「オックン」(ありがとう)」って全員きちんと言ったのには正直言って驚いた。

 

別の会場では、日本からお孫さんの古着を持ってきた団員が、同じように集まってきた子供達にそれらの服をあげ、みな、たいそう喜んでいたそうである。村長が男女別、大きさ別に服を並べ、一人一人にきちんと渡してくれたという。

 

国力、治安、経済、問題山積のこの国だけれど、この子達にこそ頑張ってほしいものだ。

 

服を着ていない子も多い・・。自分の親の時代だってそうだったかもしれないけれど・・。

礼儀正しいこどもたち。「援助する」「援助される」ということではなくて、「ありがとう」ときちんと言える彼らと私たちは、その時点で「高い、低い」も「年長、若年」もなく、同じレベルの「人と人」とのつきあいだ。

十分な教育と医療と食料さえあれば、彼らは日本の子供達と全く変わらぬ「カンボディアの金の卵」なのである・・。

 

2001年12月5日

 

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