ただいま出張中 


30.機内にて

 

機はそろそろ沖縄上空である。

あと2時間くらいで成田に到着する。TG772便成田経由ロサンゼルス行き。ファーストクラス18席は12席ほどしか埋まっていない。

 

思えばこの1年間に4回カンボディアに渡航し、延べ260日余を過ごした。考えてみると1年の大半をカンボディアで過ごし、「仕事用の頭」と「技術」はすべてカンボディアのために費やした。調査費用自体も莫大なものだけに、なんとか我々の作った計画を実現させたいものである。

 

帰国に際して大使館を訪れた私たちは小川大使に面会し、私たちのプロジェクトについて説明させていただく機会を得た。展示圃場のこと、未亡人と豚のこと、国民の70%が農業から収入を得ているカンボディアで、農業・農民に対する支援がいかに有意義でかつ求められているかを訴えた。最近の日本の対カンボディア援助は、明らかに道路建設と橋梁建設に重点が置かれている。たしかに裨益人口は多く、なんといっても「手離れ」が良い。つまり、作ってしまえば見栄えもするし効果の発現も速い。一方の農業、特に灌漑事業は、収量増、農家の収入増など目に見えた効果が認識されにくく、しかも時間がかかる。そしてなによりも維持管理や農業普及、クレジットによる支援など、ソフト分野の支援・啓蒙が欠かせない。

 

現在、カンボディアにおける農業(灌漑)案件推進において、「悩みの種」は、ある灌漑事業の「暗礁」にある。カンボディア政府担当分の工事区間が供用開始と同時に壊れ、竣工式も行えない状態である。日本側は、「カンボディア担当工事が悪い」といい、カンボディア側は「日本のコンサルの設計ミス」といって憚らない。壊れた部分の再工事費など、カンボディア側に負担する余裕はない。

 

日本側は動けない。カンボディア側は日本に期待する。日本の外務省は「灌漑案件はうまくいかない・・」とばかりに、今年度開始されるはずの灌漑案件もいまだ動きがない。

 

「誰が悪い」とは言わないが、いずれにしてもカンボディアにとっては不幸なことだ。私たちが260日間を費やしてこさえた計画も、いつ陽の目をみるか。はっきり言って当てはない。

 

 

さて、あと1時間ほどで成田に到着だ。

明日はJICAに報告にうかがう。

そして、明後日から約3週間、次の「ただいま出張中○○○○便り」に向けてプロポーザル作りだ。仕事が取れれば4月頃から新たなシリーズを始めるつもりである。

 

カンボディア業務でお世話になった農家、水資源気象省はじめ関係各政府機関、JICAはじめ日本人関係者に心からお礼を言いたい。

2002年2月13日

TG772便機内にて

 

 

 

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