ただいま出張中 

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Since April 17th, 2000 / Last Update March 14th, 2003


3.灌漑施設と人々の暮らし

 

3年ぶりに南スラウェシ州サダン灌漑地区を訪ねてきました。サダン灌漑地区は南スラウェシ州最大の河川で、渇水期の最低流量が60〜70m3/sにも及ぶ大河川です。サダン灌漑地区は、1930年代にオランダが建造したベンテン頭首工がいまだに健在で、左右岸に70m3/s以上の灌漑用水を分水し、58,000haの水田を潤します。

 

以前にこのページでも書きましたが、この南スラウェシ州南部のケララ・カラロエ地区では、改修が終わって流量の増した用水路で「いつものように」遊んでいた小学生が溺死する、という悲しい事故が起こりましたが、灌漑施設は地域住民の憩いの場でもあり、また生活の場でもあります。昨日サダン地区で見かけた風景をちょっと紹介します。

 

 

ベンテン頭首工

 1930年代にオランダによって建造されたもので老朽化は進んでいるものの昨日はしっかり保たれている。

 堰は全面ゲート(8門)からなるいわゆる「バラージ」(可動堰)タイプである。ま、ちょっとしたダムみたいなもの。

 この日の流量は105m3/sで、そのうち60m3/sが取水されていた。来月から再来月にかけて最低流量となり、河川水は全量が灌漑水路に分水される。

 堰上は二輪車、歩行者が通行でき、「橋」としての機能も持っている。

 

 

頭首工下流側では釣り糸を垂れる人たちがたくさんいる。釣れるんだか釣れないんだかよくわからないが、とにかく日長ここにいて釣りをしている人がいる。下流右岸側では投網を振る人もいる。それにしても、怖くないのかな? 落ちたら濁流にのまれて死ぬと思うんだけど・・。

 

 

開放されたゲート部分では遡上する魚が飛び跳ねたところをうまく捕らえるための網がセットされている。ま、結構これがうまくいくようで。実際に魚が入っていました。こういう漁法はインドネシアだけでなく、カンボジア、その他いろいろな国で採られているようで。頭首工やダムでは、こうして漁業で生計を立てようとする人も出てくる。結構見逃せないプロジェクトの便益ではある。

 

頭首工右岸側のペカバタ幹線水路起点部の沈砂池。ここで取水した水に含まれる土砂を沈殿させ、上澄みのきれいな水を幹線水路に流す。この日はこの水路への分水はおこなわれておらず、子供たちは沈砂池内で水遊び、主婦は洗濯に余念がない。パンツもはかずに自転車を乗り回し、でも、カメラを向けるとちゃんとオチンチンを隠そうとするのがかわいらしい。

 

水路脇のコンクリート部分は農産物の乾燥に最適だ。ここではカカオの実を乾燥させていた。90年代のルピア暴落で、逆に輸出用エステート作物による収入増が農家の現金収入を支えてきた。今でも、農家は庭先でカカオの木を数本植え、小金を稼いでいる。舗装道路も同じように乾燥場として利用されている。コンクリートやアスファルトは熱を吸収し、乾燥にはもってこい。

 

海に近い末端水路部分では、潮の満ち引きを利用して汽水域に生息する魚(ミルクフィッシュ)やエビの養殖が行われている。ここでは、地区の排水にあがってきた海の魚と、淡水魚(なまずなど)の両方が獲れるそうだ。主婦たちは日長「今晩のおかず釣り」。巻き貝を餌として、結構釣っていたな。

竹の一本竿だけど、しっかりと浮きつきの仕掛けもついていて、おばあちゃんの「合わせ」は絶妙だった。左端の女性は妙に顔が白いのだが、これは「パック」中だから。もっとも、何を塗っているのかはわからんが、石膏で塗り固めたような異様な顔だった。

 

 これは灌漑水路には関係ないが・・。

ホテルで蚊取り線香を頼んだところ、「台」を持ってきてくれなかったボーイ。

 「どうやって使うの?」って訊いたら、ボーイはおもむろに電話帳の1ページを破り、蛇腹状に折ってその上に火をつけた蚊取り線香を乗っけた。下には灰皿を置いています。

 なんと紙に火はつかず、最後まで蚊取り線香は消えることもなく燃え尽きた。

 長い間海外で蚊取り線香を使ってきたが、こんな方法は知らなかった。ちょっと感激。

(よい子のみなさんはマネをしないようにね)

 

2003年7月6日