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19.「 夢の菜園」(その1)〜とりあえず、やれるとこまでやってみよう」

 

カンボディアの農村では、庭先に池を掘り、生活用水、家畜用水、灌漑用水に活用している。まともに計算すると、水は乾季の数ヶ月間でなくなってしまうことになるが、なぜか一年を通じて水をたたえている池が多く、農家はその水をうまく利用して、雨季早々の雨がまだ少ない時期に水稲の苗代づくりを行ったり、池周辺でサトウキビを栽培し、それを近くの市場に出したりして結構な現金収入を得、いよいよ水が少なくなってくると、一気にポンプで水を吐きだし、魚を捕って貴重なタンパク源としている。

 

我々にとっては、「マラリア蚊の温床」にも思えるそうした池だが、実際に地元の農民は「うま〜く」利用しているのである。

 

かつてインドネシアの小規模灌漑事業で、浅層地下水をエンジンポンプでくみ上げる灌漑システムを計画したことがある。計算上は、1日8時間以上ポンプを稼働させて、やっと水が足りるような計画であったが、実際工事が終わってみると、農家は燃料代をケチって、わずか数時間のポンプ稼働で立派に野菜を栽培し てみせた。「農家の知恵」が、我々の計算では推し量れない節水灌漑を実現したのである。

 

 

そこで、今回・・・。我々調査団内部でも「池を利用して野菜を作ってみようではないか・・・」との話が持ち上がり (というより、私が言い出し、勢いで始めてしまったような気もするが・・・)、今次の調査期間(4ヶ月半)を利用して、実行に移すこととした。仕事と密接な関わりがあることを、コンサル独自で実証してみようという、きわめて「見上げた試み」である。

 

展示圃場は、水源として我々の事務所がある水資源省タケオ支所の敷地内の池(10m×15m、深さ2m程度)を利用することとし、隣接する農業省普及センターの一角に20m×15mの圃場を造成する。牛や豚や鶏その他から作物を守るために、周囲には柵を張り巡らす。ある程度の客土を行い、コンポストと肥沃土を混ぜ込んで土づくりをする。期間も限られているので、この際、配合肥料を使う。農薬は使わない。

 

カウンターパートたちにそれぞれの役割を与えた。私のカウンターパート(基盤整備)は圃場造成担当。農業のカウンターパートは作付計画、圃場レイアウト設計、種子の調達。農業経済担当は、収穫物の販売(できるかぁ?)、水文担当はジョウロで水やり(?)・・などなど。みな、ヒジョーに張り切っている。

 

ある日、農業担当カウンターパート(女性)が、「はい、これ・・」、と展示圃場の「設計図」を差し出した(下写真)。あまりのすばらしさに感動した。

 

 

圃場の真ん中にコンポストを山積みし、周辺の角4区画には、トウモロコシとキャッサバ、ナスとトマトとトウガラシ、マメ類、そしてニガウリとキュウリを配置し、コンポストの回りにはサフラン、ショウガ、ペパーミント、バジル等のハーブ類を植える。その上にはマスタード、セロリ等を植え、下側にはサラダ菜、カンクンなどの葉菜類を植える。畑の周辺部は家畜が嫌うレモングラスを植え、圃場の四隅にはパパイヤを植える念の入れよう・・・・。す・ご・い!

 

さて、どうなることやら・・・。

 

「カンボディア便り」では、ひきつづき、この展示圃場の模様をお知らせします。

 

2001年8月29日

 

 

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