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19.「 夢の菜園」(その3)〜苗床ハッチ完成。レモングラスとタロいも移植中」

 

圃場はわずかながらも整備が進み、苗代ハッチもでき、苗づくりと移植が始まった。

 

圃場の最も池に近い地点に苗床ハッチが完成した。5mの丸太4本と割竹2束。それにネットで計20ドルかかった。周辺もネットで囲い、雨が苗に直接当たるのを防いでいる。

それにしても、問題なのは、土・・。客土した土は、完璧な粘性土。耕起しても、雨が降ったり、人が通ったりすると「カチコチ」に固まってしまう。少しずつ有機物を入れたりしているものの、どうなる事やら・・。しかし、水稲の裏作としては、「まあ、こんなものか・・」と割り切ったりして・・・。

畝の立て方に工夫が必要。

左側が農業のカウンターパート。普段から非常に無口だが、本当に一生懸命で感心する。彼女が作った設計図通りに、しっかりと移植、苗作りを進めている。

右側は、事務所のオフィスキーパーの女性。彼女も一生懸命仕事をしてくれるし、圃場の手伝いまでしてくれる。

思いつきで始めた展示圃場だけれど、こうした作業を通じてあまり接する機会のない人たちとも笑い会う(言葉は通じないので・・)こともできる。立派なじょうろも光っている。

圃場の外周には(牛、豚、アヒル、鶏除けの)柵を巡らしたが、その柵沿いには「動物の嫌がるレモングラス」を移植した。さらに、その内側には、ちょっと深めに溝を掘って水を張り、タロイモを移植。

こんな粘性土で大丈夫なんだろうか?

でも、今朝のNHKで、「硬い土で軟らかいゴボウが穫れる・・」とかいう、広島の農家の収穫模様を流してたなぁ・・。ま、試してガッテン。

日本から持ち込んだプラスティックポットが足りなくなって、「タケオに売ってないよなぁ・・」、と訊いたところ、秘書が、「あるわ、あるわよ・・。アイスクリーム入れるやつ・・」とか言っていたが、次の日に持ってきたのは「コーラのプラスティックカップだった。

でも、いいや・・。安いし、使えるし・・。何となくもったいないけど、十分に用はなすのだ。

農業カウンターパートは、せっせと苗作り・・。トマトの苗にはしっかり藁をかぶせて水分の蒸発を抑えている。学ぶことも多い?

 

 

展示圃場遠景。右が我々の事務所のある建物。左手前が「ため池」。灌漑用に使うことになっているが、最近は雨が毎日のように降るのでこの水を使うことはない。

 

牛はご覧のようにやせ細ってみすぼらしい。時々我々の事務所の軒先の通路を占領して、我々と並んで圃場を眺めていたりする。「どけよ・・、おまえ」とか言って、お尻をたたいたり、頭をなでても、一向に動こうとせず、逆に人の足をなめたりするかわいい奴らでもある。

 

彼らの「うんこ」を肥料として狙っているのは言うまでもない・・。

 

 

事務所でずっと報告書を書いたり図面を作ったり・・・、気が滅入ることも多い。

「う〜ん、筆が進まない・・」。そんなとき、部屋を出て、トイレへの行き帰り、そしてインスタントコーヒーを入れながら、ふと圃場に足を運んでみようと思う・・。そして、「10m先」にある乾いた苗に少し水をやり、また、鍬で硬い粘土をひと起こし、ふた起こしする。ふと見ると、昨日レストランで出された見慣れない熱帯果樹の種をこっそり植えている同僚がいたりする・・。

 

ずいぶん昔、若い頃に考えたことがあった。

「農業のコンサルが農業の実際を知らなくてどうするんだ?」、とか・・・。

「夏は畑仕事をして、冬にコンサルをやればいいんじゃないか?」、とか・・・。

 

技術士の試験準備をしているときに、農業一般の問題(日本の農業のあり方などについて書く)を書けなくて、「農村に行ってみようと思うんですよね、自分は農業のこと、農家のこと、何も知らない・・・」、と先輩に話したこと・・。(いまから考えると、「ふふ〜ん」と思うが・・)

 

ま、いろいろと感じるところはあるものの、事務所ではコンサルとしての仕事をして、トイレに行く途中に牛に触れ、野菜の苗に水をやり、気まぐれに鍬を持ち・・・、そうした環境にいること自体にえらく満足した。

2001年9月6日

 

 

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